Zoom を活用した欧州特許庁の透明性向上と適正な審理の利用機会の拡大

欧州特許庁が適正な審理の利用機会を国際的に広げ、弁理士がクライアントに提供するサービスを向上するために、Zoom がどのように役立てられたかをご説明します。

欧州特許庁
欧州特許庁
企業規模:

従業員数 1,000~9,999 人

38 の加盟国を代表する欧州特許庁(EPO)は、ミュンヘンに本部を置き、欧州全体のイノベーション、競争力、経済成長を支援しています。同庁の存在意義は大きく、受理する特許出願件数は年間 18 万件以上にのぼります。その 45% は欧州の企業、研究機関、発明家から、55% は米国、日本、中国、韓国、および欧州市場で技術の保護を希望するその他の国からの出願です。

 

昨年は、約 134,000 件の特許が付与されました。通常、欧州で新たに付与された特許の約 3~4% が異議申し立て(主に競合他社によるもの)を受け、「異議申し立ての口頭審理」で議論されますが、パンデミック以前は常に EPO で直接審理を行っていました。新型コロナウイルスの感染予防対策により対面での審理ができなくなり、未処理の異議申し立てが毎月数百件ずつ増えたため、口頭での審理はビデオ通話へ移行することになりました。

 

イノベーションの検証

特許が付与されるのは、新規性と進歩性を有する発明のみに対してであり、既存の要素を単に組み合わせただけのものは当てはまりません。特許審査官は、最新の出願とデータベースに登録されている数百万件もの文書を照合し、申請された発明が本当に新規かどうか検証します。審査官が特許付与に値すると認めたとしても、その発明の新規性などに疑義を呈する証拠や主張を持つ競合他社および一般市民は、特許付与に異議を申し立てることができます。特許権保有者と異議申立人の代理人である弁理士が、EPO の専門家パネルの前で、英語、フランス語、ドイツ語で、時には数日かけて審理を行います。

 

デジタル審理室の導入

未処理の異議申し立てが増えたことは、テクノロジー市場に不確実性を生み出していました。「特許が承認されたかどうかわかるまで、どのぐらい待てばいいのか?」という不安が広がったのです。特許制度が円滑に機能するには、特許の範囲に何が含まれ、何が除外されるかを迅速に明確にする必要があります。しかし、未対応の異議申し立て審理を処理するには、強固で信頼できるビデオ コミュニケーション プラットフォームが必要でした。

 

EPO は、Zoom のアクセシビリティ機能が適正な審理の利用機会の拡大につながり、EPO の多様な出願者や弁理士をサポートするのに役立つと判断しました。「審理では、当事者が英語、フランス語、ドイツ語を交えて話す可能性があるため、通訳者を支援し、複数のオーディオ チャネルの利用を可能にするには、Zoom が最適なプラットフォームでした」と、欧州特許庁(EPO)のコミュニケーション マネージャー、Jeremy Philpott 氏は語ります。「現在では、通訳が必要か否かにかかわらず、すべての異議申し立ての審理、さらに、証人からの証拠収集に Zoom を採用しています。」

 

「異議申し立ての口頭審理にビデオ [コミュニケーション] が導入されたことで、法的な判断の透明性が大幅に向上しました。異議申し立て審理は常に公開されてきましたが、パンデミック以前は、年間 3,000 件以上の異議申し立てを実際に傍聴するのはわずか数百人でした。しかし、現在はすべて Zoom で公開されるため、法学部の学生や NGO、海外の特許権保有者など、世界中から何千人もの傍聴者のアクセスがあります」と、Philpott 氏は付け加えます。

 

適正な審理の利用機会の拡大をサポート

欧州の特許専門家のほとんどがミュンヘンを拠点にしてきましたが、特許異議申し立てに関する法律サービスの市場は拡大し、欧州各地に拠点を置く弁理士が参入するようになりました。物理的な障壁が減ることで、適正な審理の利用機会が国際的に広がり、弁理士がクライアントに提供するサービスも改善されました。EPO は、2021 年秋以降、あらゆる種類の口頭審理を Zoom のみで行う予定です。

 

弁理士およびバーチャル審理室メンバーの方々からお寄せいただいたコメントをご紹介します。

  • EAI 知的財産担当主任弁護士、Giuseppe Colucci 氏:「このテクノロジーは、現実の生活を模倣したものです。対面式の審理では、一度に全員と面談することはできませんが、Zoom では可能です。バーチャル形式だと、審理の出席者の数も増やせます。」
  • EPO 専門代理人、Robert Schnekenbühl 氏:「必要に応じてメモや関連資料を完全に自由に利用できるので便利ですね。口頭審理を行う際は、手元に置いておきたい便利なツールです。答弁の際は、重要な箇所を黄色のマーカーで強調した紙を見せるのではなく、ビデオや画像を高品質なフォーマットで全員と簡単に共有できます。」
  • フリーランス通訳者、Peter Sand 氏:「Zoom のおかげで、私を含め、通訳の同業者の仕事が増えました。リモート通訳のプラットフォームは他にもありますが、私が知る限り、ほとんどの通訳者が Zoom を使って仕事をしたいと言っています。EPO が異議申し立ての手続きをこのプラットフォームで行うことを決定したと聞いたときは、喜ぶ通訳が多かったですね。」
  • AIIC カンファレンス通訳者、Birgit Schulte 氏:「新しい [Zoom] 機能が導入され、リモートのカンファレンスでも、同時通訳が可能になりました。Zoom は間違いなく最高のプラットフォームの 1 つで、常に新しい機能を提供しています。」

 

Zoom を活用した適正な審理の利用機会の拡大および公的機関の業務強化の実例については、Zoom ブログをご覧ください。

 

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